子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 よかった。

 不安だったから。もしかしたら、困らせちゃうんじゃないかって。

「さあ、座って」

 体を離した彼は私の手を取り、座布団に腰を下ろす。

「すぐに籍を入れよう」

 それは……。

 子どもと結婚は違う。

 喜んでくれたのはうれしいけれど、でも。

「頼む円花。俺に父親をやらせてくれよ」

 えっ……。

「頼むから」

 疾風さんは悲しそうに眉尻を下げて、私の頬に手を伸ばす。

「そんな顔をしないで、疾風さん。私は」

「ごめんな、嫌な思いをさせて。強引に――」

 違うの。

 左右に首を振りながら、込み上げる涙を我慢できなかった。

 抱き寄せられて、疾風さんのワイシャツに涙のシミを作りながら、しまいには声を出して泣いた。

「でも、俺はやっぱり、お前じゃなきゃ嫌なんだ」

 疾風さん。

 私……。

 だめだよね。ちゃんと言わないと。正直に。

 潤む瞳で彼を見上げ、声にならない声で、ずっと言えなかった想いを伝えた。

「疾風さん……。私、疾風さんが、好き。大好きなの」

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