子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 実の母はいるけれど、今は年賀状のやりとりさえしていない。電話をかければ相談には乗ってくれると思うけれど、母には母の家族がいるから邪魔をしたくない。

 私はもう辰上円花だ。

 努力して家族に迎い入れてもらいたいと思っている。

 ただ――。

「若奥様、いってらっしゃいませ」

 どうも、この〝若奥〟にはなかなか慣れそうもない。

 にこにこと笑顔で玄関までついてきてくれるのは、齢六十になる家政婦の春子さんだ。

「行ってまいります」

「おなかを冷やさないように、お気をつけくださいね。今日はポットに温かい黒豆茶を入れておきましたから」

「はい。ありがとうございます」

 私が乗り込むのは運転手つき送迎用の車。会社の人に見られたらと思うと気が気じゃないのでいつもよりさらに早く出勤するようにしている。

 ぺこりと頭を下げて車に乗ろうとすると疾風さんも出てきた。

「今日は俺も早く行く」

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