子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
『あー、背が高い人はいたかも……でも顔は覚えてないっていうか、竜神さんみたいなイケメンなら目立つでしょうに。別人よ。他人の空似じゃない?』

『出入りの業者さんなんて覚えてないわよ』

 そもそもウォーターさんを気にかけている人はいないようだった。

 ウォーターさんは作業服を着ていたし、マスクをして目深に帽子を被り眼鏡もかけていたから雰囲気は全然違う。何より彼はこんなふうに高貴な空気をまとってはいなかった。

 竜神さんはアメリカにいたのだから、同じ人であるはずはない。

 でも、似てるんだよなぁ……。

 手をかざして竜神さんの目もとを片目で凝視すると「なにやってるんですか」と叱られた。

「似てる人がいるって言われた事ないですか? もしかしてあの人は竜神さんだったりして。そんなわけ――」

「ない」

 うっ……。有無を言わさぬ否定っぷりだ。

 まあ実際可能性は低いだろう。竜神さんとウォーターさんではあまりに境遇が違い過ぎる。
 目の前のこのゴージャスな人が、作業服で水を担ぐはずはないから。
 
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