子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
そうこうするうち料理が運ばれてきた。
おお~!
上品に盛り付けられたお料理の数々。
一品ずつの懐石ではなく松花堂弁当だ。気を使わずに食事ができそうでホッとする。
それでもマナーがあるかもしれないので、竜神さんの真似をすべく観察をする。
彼はまず、箱の蓋を開けて向こう側に置く。
お箸は右手で取り左手で――。
「ん? なにか?」
「所作が綺麗だなと思ってみとれちゃいました」
「それはどうも」
あまり見るのも失礼なので、気にせずいただこう。
「いただきます」
汁物で喉を潤し、次に口に運んだのはタケノコ。
噛みしめるほどに広がる春の香り。くらくらするほどおいしくて思わず「さすが」と感嘆の言葉が漏れる。
「そんなにうまい?」
ふと前を見ると、クスッと笑う竜神さんと目が合った。
「おいしいですよ。すっごくやわらかくて。素材の味はそのままにプラスアルファの旨味は素人には出せませんね」
竜神さんも同じ料理に箸をのばす。
うなずくところを見ると、彼も認める旨さだったに違いない。
「竜神さん、いつもこんな贅沢をしているんですか?」
「まさか」