子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「お前はそれでいいのか? 何も悪くないのに理不尽な仕打ちをされて、黙ってそれを受け入れて、本当にそれでいいのか?」
「よくない」
そんなの私だってわかってる。
「だったら」
「しょうがないじゃないですか!」
思わず声を荒げた。
つっぱって自己主張したとして、それでどうなるんですか。
たとえ理不尽なことを言われても、不条理なめにあわされたとしても結局、立場が弱い人間は尻尾を丸めて逃げるしかないんです。
怖いもの知らずのあなたは想像できないでしょう。
多分、一生。わからない。
それくらい住む世界が違うから。
「私のことはほっといてください」
大きく目を見開いた彼を精一杯睨みつけ、くるりと背を向けた。
ごくりと喉を鳴らし、全力で逃げる。
ぜぇぜぇと肩で息をしながらエレベーターの閉じるボタンを連打した。
早く閉じろ。早く!
あと三十センチ、あと十センチ。