子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「ったくだから君は間抜けだって言うんだ。――あ、失礼」

 なんですか、その取ってつけたような〝失礼〟は。

「敬語はやめてもらっていいですよ。私もフランクにいかせてもらいますし」

 竜神さんはこくりと頷く。

「では遠慮なく。どの課にもあの女の耳になってる女性社員がいる。とにかく、時野には気をつけたほうがいい。わかったな?」

 それでなくても眼力あるのに更に強い視線できりきりと睨まれた。

「はい……わかりました」

 迫力に負けてやむなく返事をするが、ここまで言われると反発したくなる。

 いったいあなたは何なんですか。
 私の親? 保護者ですか?

 だいたいスパイって。
 まるで時野さんが闇の魔女みたいな言い草である。

 入社したての彼は知らないだけで、秘書課の時野さんといえば男性女性分け隔てなく誰にでも評判がいい女性だ。

 総務の仕事の一環で私も時野さんとは接する機会があるが、これまで嫌な印象はひとつもない。

 入社以来、彼女はいつも親切で、優しく接してくれるのだ。

 睡眠薬はたぶん合コン相手の男性がいれたんだろう。竜神さんにどう言われようと、私は時野さんを疑いたくない。

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