子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 彼女が悪いわけじゃないと私は信じている。いくらなんでもスパイまでいるなんて、竜神さんの考えすぎ。

「あの女は、お前をひがんでいるんだ」

 あ、ついに〝お前〟になった。
 それはいいとして、ひがんでるって、そんなバカな。

「性悪女め。あいつのコーヒーにお前の爪の垢でも入れてやるか」

 あはは。私褒められているの? って笑い事じゃない。

「ちょっと竜神さん、彼女が私をひがむなんてありえませんよ。やだなぁ」

 平凡でこれといって取り柄もない私に、無敵の時野さんが何にひがむというのだろう。竜神さんは、そこら辺のことがわかっていない。

「もしかして竜神さんには、時野さんが超絶美人に見えないんですか?」

「は? どこが? 普通ーだろ。道を歩けばそこらにいる量産型だろ。あんなブス」

 ぶ、ブス?

「セクハラですよそれ」

 秘書課のNo1を捕まえてそれはないでしょうに。

 あまりにも自分が整った顔をしているものだから、基準がおかしいのだろうか、この人は。

「いいか? 美人というのはお前のような女性を言うんだ」

 思わず吹き出しそうになる。
「はい?」

「肌艶がよくて、薄化粧でも十分美しい。左右対称のアーモンド型の目といい、すべてにおいて透明感がある、お前のような女性を美人っていうんだ。わかったか」
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