子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 耳を疑って、呆然とする。
 今、ものすごく褒められましたか?
 叱られたような気もするし、絶賛されたような気もするし。

「ひとり暮らしなのか?」

「え? 時野さんですか」

「お前だよ。あんな女はどうでもいい」

「あ、私ですか。あ、はいそうです。ひとり暮らしです」

 同居人はいないが、小さな水槽の中のメダカが出迎えてくれる。

「両親は?」

「父は私が子供の頃に他界してまして。私が大学に入学した時に、母が再婚したものですから。もう名字も違うし交流もないのでね」

「兄弟は?」

「いません」

 そこまで答えると、竜神さんは瞼を伏せて神妙な顔になった。

 ――あ。やっちゃった。

 恵まれているとは言い難い私の家族構成。

 この話をすると、誰もがそんなふうに微妙な表情を浮かべるのだ。

 それがわかっているから、よほど親しくない限り言ったりはしないのに、つい、口が滑ってしまった。

「もしかして心配しちゃいました? 大丈夫ですよ。父の遺産で大学もいけたし、私はこれでも独り暮らしを満喫しているんですから」

 竜神さんは大きく息を吐く。

「俺もな、似たようなもんだ」

「え?」

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