子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
向かってくる彼の鋭い瞳が、扉の向こうに消えようとしたそのとき――。
ダンッと大きな音がして扉の動きが止まり、息を呑む私の目の前に大きな手が見えた。
無情にも開いた扉から見えたサディスティックな薄い笑み。閉じようとする扉を止めるように、彼は足を挟んで立ちはだかった。
「な、なにを」
「お前がよくても、俺が嫌なんでね」
「意味わかんないです。関係ないって言ってるじゃないですか」
「よくないって言ったよな? ようやくまともに本音を言ったかと思って黙って聞いてやったが、そこまでだ」
スッと伸びてきた彼の長い指に顎をすくわれる。
「お前の意見なんぞ、はなっから聞いてないんだよ」
彼の鼻白んだ冷たい視線が氷の矢のように突き刺さる。
冷たいはずが、燃えるように熱く変わり、私を炎に巻き込んでいく。
「たまには黙って、俺の話を聞け」
彼はそう言って唇を重ねてきた。
竜神疾風、二十八歳。
彼は、ほんの二カ月前の寒い冬の日、中途採用でやってきた年上の後輩だ。
ゆっくり唇を離し、言葉を失ったままの私を満足そうに見下ろして、彼はにやりと口角を上げる。
「俺が結婚するのはお前だ。円花。ほかの誰でもない」
ダンッと大きな音がして扉の動きが止まり、息を呑む私の目の前に大きな手が見えた。
無情にも開いた扉から見えたサディスティックな薄い笑み。閉じようとする扉を止めるように、彼は足を挟んで立ちはだかった。
「な、なにを」
「お前がよくても、俺が嫌なんでね」
「意味わかんないです。関係ないって言ってるじゃないですか」
「よくないって言ったよな? ようやくまともに本音を言ったかと思って黙って聞いてやったが、そこまでだ」
スッと伸びてきた彼の長い指に顎をすくわれる。
「お前の意見なんぞ、はなっから聞いてないんだよ」
彼の鼻白んだ冷たい視線が氷の矢のように突き刺さる。
冷たいはずが、燃えるように熱く変わり、私を炎に巻き込んでいく。
「たまには黙って、俺の話を聞け」
彼はそう言って唇を重ねてきた。
竜神疾風、二十八歳。
彼は、ほんの二カ月前の寒い冬の日、中途採用でやってきた年上の後輩だ。
ゆっくり唇を離し、言葉を失ったままの私を満足そうに見下ろして、彼はにやりと口角を上げる。
「俺が結婚するのはお前だ。円花。ほかの誰でもない」