子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 聞くところによると、彼は女性が参加する社内の飲み会はすべて断っているらしい。
 つれない男なのだ。

 その冷ややかささえも彼女たちの目には、クール! 脚立まで素敵に見えるわ、というイケメンバイアスがかかるのだろう。
 その証拠にひとりの女性が「電球の交換ですね。わざわざすみません」と礼まで言う。

 これで竜神さんがスペックの高いイケメンでなければ、脚立を持った総務の男など見向きもしないだろうに。

「仕事ですから」

 竜神さんは秘書課の女性たちを軽くあしらって、また歩き出す。

「竜神さんってほんと、モテますよね」

「否定はしないが、面倒なだけですよ」

 ああそうですか。

 と、そこで廊下の角から現れたのは藤原専務だ。

「あ、桃井さんちょうどよかった。書類持っていって欲しいんだ。帰りに声かけてくれる」

「はい、わかりました」

 藤原専務は軽く手をあげ、専務室の扉の向こうに消えていく。

 フフッと私の目もハートになってしまう。

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