子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～

　カチャっと扉を開けると同時に、鏡に映ったふたりの秘書が驚いた顔をして口を閉ざす。

　あからさまな態度にズンと心が沈んだけれど、だからと言って引き返すわけにもいかない。

「失礼します」

　頭をさげて中に入ると、入れ替わるようにして出て行く彼女たちは、先週の合コンにいたうちのふたりだった。

　事情を知る彼女たちに話を聞きたいが、そういう雰囲気ではない。

　それでも思い切って声をかけた。

「あの、すみません」

　ふたりは振り返る。

「金曜日の件ですが、教えてもらえませんか？　私、あまり記憶がなくて。皆さんはあのとき」
「私たちは先に帰りましたよ。なにも知りません」

　私の言葉を遮り、露骨に嫌そうな顔をしたふたりは、ふいっと背を向けて行ってしまう。

　はぁ、参ったなぁ。
　私は、すっかり嫌われてしまったようだ。

　書類を渡す程度のやりとりしかないとはいえ、今後を考えると気が重くなる。