子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 私はこれまで、大勢の中に紛れるようにして、目立たないように気をつけて生きてきた。

 生きてきたと言えば大げさに聞こえるかもしれないが、それが頼る人のいない私の生きる術なのである。

 目をつけらたりしないように、人に嫌われたりしないように。

 私には、家に帰っても慰めてくれる人も、涙を拭いてくれる家族もいない。

 誰にも迷惑をかけず、せめて人より傷つかないで済むように、争い事を避けて自分を守ってきた。
 社会人になって、より一層気をつけてきたつもりなのに。

 ここへきて。私はなにか対応を間違ったのだろうか?
 どこで失敗したのだろう。

 溜め息をつきながら給湯室に向かうと、声が聞こえてきた。

「あの男がそう言ってましたよ」という声は、竜神さんだ。

「とにかく、桃井さんは彼らに持ち帰られてなんかいませんから」

 竜神さんが話をしている相手は誰なのか。

 立ち聞きも気まずいので、恐る恐る顔を覗かせた。

「あの……」

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