子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「そんなことだろうと思っていました。店は任せてください」

 不敵に微笑む竜神さんは、きっとよくお洒落な店をたくさん知っているのだろう。

 彼は男性の同僚とはよく行っているようだ。『飲みに行かないか?』なんて、よく声をかけられている。

 私は飲みに行く機会がない。

 というよりも飲み会は断っている。新入社員歓迎会だけは参加したけれど、体調が悪いと言って抜け出した。

 先週の件といい、私にとって飲み会は鬼門である。

 多分今日を除いては。


 定時の夕方五時半。私たちは退社してそのまま飲みに行った。

 正直言うと竜神さんと並んで歩くのは気がひけるし、ファンの女性たちに嫉妬される心配はある。
 でも竜神さんならば、噂になっても彼が真っ向から否定してくれるだろう。一刀両断に噂を切り捨て、黙らせるに違いない。

 だから気にしない。

「桃井はどうして飲み会に参加しないんだ? 合コンは別にしても」

 オフィスビルをでた途端、フランクな竜神さんになる。

< 43 / 159 >

この作品をシェア

pagetop