子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～

　これといって特徴のない風貌で、平凡な庶民の私がどうしてこの一流企業に入れたかというと、一応名の知れた国立大学出身であるし、真面目ゆえに成績だけはよかったからだと思う。もしくは運がよかっただけ。

「円花ちゃん。おはよう」

　ポンと肩を叩いたのは、秘書課のマドンナ時野さんだ。

　ここは頭脳明晰で優秀な人や美人も多いが、彼女の場合は家柄もいい。父親が有名企業の社長という、パーフェクトウーマンである。

「おはようございます」

「先週の飲み会、随分酔ってたらしいけど大丈夫だった？　私、用事があって先に帰っちゃったから」

　苦笑いでごまかした。

「すいませんでした。大丈夫です」

「どうなの？　もしや、お隣の席に座った彼と……とか」

　時野さんは意味深な目配せをする。

「な、なんにもないですよ。そもそも私、遠距離とはいえおつき合いしてる人いますから」

　架空の彼ですが。

「そっか、そうよね。あ、そうそう、昨日頼んだ資料よろしく」

「はい。了解です」