子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 でも今日は、優しくしたりして私を泣かせた責任を取ってくださいね。

「ねえねえ竜神さん。腕時計見せてくださいよ」

「ん?」

 彼は手首の時計を外し私に差し出す。

「うわー、高そう」

 私の時計と並べてみたら。竜神さんと私みたいに見えた。

 ゴージャスでキラキラ輝く時計と、とりあえず時間がわかるだけの名もなき時計。

「すごいなぁ、これ有名ブランドのマークですよねー。こっちはどこの国の時間ですか?」

 時計の中に小さい時計がある。

「ニューヨーク」

 へえーと感心しながら思う。

 ニューヨークに恋人でもいるのかな?



「さあ、着いたぞ」

 タクシーを降りた場所は繁華街ではなかった。

「え? ここって」

 どうみてもお店ではなくマンションである。

 上を向いても最上階が見えないくらい高い。とてつもなく。

「イタタ」

 見上げていたら首が痛くなった。

「ほら、入らないと閉まっちゃうぞ」

 竜神さんが扉を押さえている。

「あ、はい!」

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