子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 広いロビーだ。今はカウンターに人はいないけれど、普段はコンシェルジュとかがいるんだろう。

 エレベーターは何基かあって、竜神さんがボタンを押したエレベーターの表示を見ると途中の階の表示がなく高層階だけの表示があった。

 程なくして扉が開いたエレベーターの中に入る。

「あの、もしかしてここって竜神さん家?」

「もしかしなくても俺ん家に向かっている」

 え?

「だから人目を気にせず、思う存分泣いていいぞ」

 いえいえ、涙なんて引っ込んじゃいましたよ。

「いったい何階に住んでいるんですか?」

「三十五階」

「凄い……」

 エレベーターのボタンを見れば、三十五階は最上階だ。

「タワマンの中じゃ普通だよ」

 そうかもしれませんけれども、タワーマンションの最上階に住む時点で異常ですよね。

 エレベーターを降りると慣れない高速と酔いのせいで足元がフワフワする。実は高所恐怖症だけれど、外は見えないから大丈夫。

 千鳥足で竜神さんの後ろをついていき、部屋に到着する。

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