子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 玄関がバカみたいに広い。

「失礼します」と長い廊下を進むと、これまた広くて天井の高いリビングに出た。

「好きにしていていいぞ」

「ありがとうございまーす」

 面積はどれくらいあるんだろう? 総務課の部屋がすっぽり入ってしまいそうだ。

「竜神さん、ひとりでここに住んでるんですか?」

「ああ、ひとりだよ」

「もったいない」

「じゃあ、引っ越してくるか? 部屋余ってるぞ」

「それはどうも」

 冗談抜きで間借りさせて頂きたいくらいだ。

 バッグをソファーの上に置かせていただいて、そのまま窓辺に立った。

「うわー、なんて綺麗なの」

 いままで避けてきたから、こんなに高いところから外を見下ろしたのは初めてかもしれない。

 でも夜景の美しさが恐怖心に勝って、少しも怖くない。

 凄いなぁ。

 キラキラ輝く街の灯りと、宝石の川のように流れる車のライト。じっと見ていると、現実感が薄れてくる。

 すべては夢か幻のような……。

「なにを熱心に見ているんだ?」

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