子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 振り返ると、竜神さんがすぐそこにいた。

「夜景ですよ。すごく綺麗だから」

 隣に立って竜神さんも外を見るが特に感想はないようだ。毎日のように見ているんだろうし、それも当然か。

「桃井の部屋は何階なんだ?」

「二階です。古いアパートだし。窓を開けて見えるのは通りの向かいのビルだけで」

「住宅手当があるんだから、それなりのところに住めるだろう?」

 まぁ確かに。

 でも貯金の方が大切だから。

「いいんです。近くに安いスーパーがあるし、今の部屋で十分満足してますから」

 竜神さんは疑わしそうに私を見下ろす。

「でもいいなぁ竜神さん、綺麗な夜景を見ると疲れも吹き飛ぶでしょ」

「うーん。まあな。じゃ、飲み直すぞ」

 振り返ると、いつの間にかテーブルの上にグラスとお皿があった。お皿には生ハムとチーズにサーモン、そしてオリーブだ。

「野菜はない。悪いな」

「いえいえ。さっきサラダをたくさん食べましたから。おいしそうなチーズ。また食欲が湧いちゃいます」

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