子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「かわいい」

 まるで愛の告白でもするかのように、彼は甘く瞳を潤ませて私を見つめる。

「やっぱり一緒に入ろうか」

「え」と言っただけでその先の抗議は彼の口の中に呑み込まれた。

 何度も角度を変えながら繰り返されるキス。その度に体の芯から熱い想いが込み上げて、堪らない気持ちが溢れ出す。

 どうしよう。本気で好きになってしまいそうだ。恋なんて一生できないと思っていたのに。

 彼は私を本気で好きなわけじゃないのに。

「ん? どうした?」

 ボディソープの泡を撫でつける彼の指先から意識を剥がすようにして聞いた。

「夕べの話、冗談ですよね?」

「結婚の話なら冗談なんかじゃない。本当だよ?」

 でも、結婚なんて私……。自信がない。

 体を重ねるのと結婚は違う。
 あなたが作業服が似合うウォーターさんだったら、こんなに悩まない。

 でもブランドの高級品が似合って、その若さでこんな部屋に住む竜神さんとなるとなると話が違う。
 ご家族については聞いていないけれど、多分資産家だと思うし。

 シャワーに顔を向けて目を閉じた。

 悲しげになっている顔を、彼に見られないように。


「俺じゃ嫌か?」

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