子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 結局のぼせるほどシャワーを浴びてしまった。

 最後は私のお腹が空腹だと訴えて、ようやくバスルームを出るという始末。

「これじゃ盛りのついた獣だな」
 竜神さんが照れたように笑う。

「俺と円花との相性が良すぎるんだな。抑えが効かない」
 独り言のように言いながら、ポリポリと頭を掻いている。

 彼は経験上で言っているのかもしれないけれど、私は初めてだから比べようがないし、よくわからない。

 でも、痛かったり怖かったりはなかった。
むしろ気持ちよかったというか、初めて覚えた快楽の味というか……。

「さあ、今度こそコーヒーを淹れよう。洗濯機使って」
「あ、はい。ありがとうございます」

「言っただろう? 敬語は禁止。それじゃ、まるでセクハラでもしているようだ」

 あははと笑って「わかった」と答えた。

「竜神さんはオフィス限定な」

「はい。疾風さん」

 うれしそうに目を細め、白い歯を見せる彼にキュンと胸が疼く。

 スーツを着ている彼は三十代に見えるけれど、今は年齢よりむしろ若く見える。
 整髪剤をつけていないせいで、サラサラの髪が額に落ちていて、上半身裸という無防備なせいかもしれない。

 背中を向けてバスルームを出ていく後ろ姿は、背筋もしっかりあって細いのに逞しかった。

 着ていても脱いでも凄い。
 そんなパーフェクトヒューマンな彼の婚約者が私?……。
 本当にいいのかな。

 溜め息をつきながら、洗濯機に下着と昨日着ていたブラウスを入れてスイッチを押し、バスローブの前をしっかりと合わせ、ウエストを紐で結んでバスルームを出る。

 廊下を進んで入ったリビングは眩しいほど明るかった。

< 69 / 159 >

この作品をシェア

pagetop