子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 部屋は東南の角に位置しているようだ。時計を見るとすでに朝の十時を回っていて、レースのカーテン越しに燦々と光が降り注いでいる。

 窓辺に立つと夕べとは違った景色に見えた。

 夕べは宝石箱のように輝いて見えたが、今は模型のような街並みが見下ろせた。
 高所恐怖症だから、素面では怖くて窓際に立てないが、これはこれで素敵な景色だと思う。

 ジュっとなにかが焼ける音に振り向くと疾風さんがフライパンを握っていた。

 様子を見に行くと、顔を上げた彼がにっこりと微笑む。

「トーストとベーコンにスクランブルエッグ。学生の頃から向こうにいたせか、すっかり習慣でね」

 ちゃんと料理になっている。ベーコンはカリカリに焼いてあるしスクランブルエッグはフワフワとやわらかそうでおいしそう。

「自炊もしてい、たの?」
 敬語で言いそうになり、途中で言い直す。

 慣れるにはまだ少し時間がかかりそうだ。


「朝食くらいはね。円花は? 普段の朝はなにを?」

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