子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
ギョッとして、危うくなんでわかるんですかと白状しそうになる。あぶない、あぶない。
「やだなぁ、気のせいですよ」
「もしかして遠距離の彼と、久しぶりに盛り上がったとか? ふふ。円花ちゃん本当に恋人いたのね」
しまった!
すっかり忘れていたが、水咲先輩にまで遠距離の恋人がいるという設定のままだ。
「それがですね――」
今後を考え、遠距離恋人は嘘だと告白しようとしたとき、水咲先輩の視線が私を通り越して後ろに移る。
「おはようございます」
ドクンと心臓が飛び跳ねる。
この声は。
疾風さんが出社したのだ。
振り返ると目が合った彼は、先週と変わらぬ態度でにっこりと口角を上げる。
「おはようございます。桃井さん」
「あ、おはよう、ございます」
普通にしていなきゃいけないのに、思わず声がうわずってしまう。
首筋から熱が込み上げてきて、慌てて頬を手で包んだ。
ああ、もうどうしよう。恥ずかしい。
こんな調子で私、本気に大丈夫なの?