子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
一緒に住み始めて一週間。
毎日は思いのほか楽しい。
家賃代わりに家事をしようと思ったけれど、疾風さんに却下された。
私もフルタイムで仕事をしているからと、掃除は引き続きハウスキーパーさんに頼んでくれている。料理もハウスキーパーさんが作り置きをしてくれるので、少しだけ作り足すだけで済む。
おかげで少しも苦じゃない。
こんなに快適でいいのかなと、不安になるほどだ。
疾風さんはどうかというと、実は気遣いの人だった。
食事後の後片付けも手伝ってくれるし、デザートを買ってきてくれては私が食べる様子をにこにこと見ていたりする。
『おいしいか?』
『すっごくおいしい。ありがとう』
寝室は一緒で、お風呂も泡いっぱいにして一緒に入ったり。なんだかんだと気づけば愛し合って。
昨夜もうふふ。
なんて浮ついている場合じゃない。
こんな調子でいたら、いつ赤ちゃんができてもおかしくない……。
チラチラと見え隠れする、結婚のふた文字。
妊娠したら結婚という約束だけれど。
本当にするの? 結婚。
やっぱり現実味がないのよね。
などど思いながらエレベーターを待っていると。
「円花ちゃーん」
振り向いた先に時野さんが見えた。
彼女は小走りにこっちに向かって来る。
「円花ちゃん。この前はごめんね」
両手を合わせて時野さんは強く目をつぶる。
時野さん……。
毎日が楽しくてすっかり忘れていたが、彼女は疾風さんに厳しい追求を受けていたのだった。
「なかなか言う機会がなくて」
「いえ、こちらこそ」
「私、本当に知らなかったから反省してる。彼らとはもう二度と会わないわ。私も怖いもの」