子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 やっぱり時野さんは関係なかっただろうか。

 そうだといい。秘書課のヒロインと言われる人だもの。悪事を働くなんて考えたくない。

「竜神さんにすっかり誤解されちゃったみたいね」

 彼の名前を出されてドキッとする。

「すごい剣幕で怒るんだもの、びっくりしちゃった」

 確かに。時野さんに詰め寄る彼は結構な迫力だったと思う。

 男性社員はみんな彼女に優しいから、あんなふうに厳しくされた経験はないんだろう。  
 相当ショックだったに違いない。

「でも円花ちゃんを心から心配してる感じだったわ」

「私が頼りないから。申し訳ないです」

「それだけ? まるで俺の恋人になにをする!、みたいな迫力だったわよ。なーんか、ふたりはお似合いだから、もしかして」

 あははと明るく笑ってみせた。
「まさか、ありえないですよ」

「そっか。まあいいわ。ところでちょっとお願いがあるんだけど……」

 時野さんのお願いとは藤原専務の会議に使う資料だった。

「わかりました」

「ありがとう。助かる」

 

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