子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 彼女に資料作成を頼まれるのは久しぶりだ。

 たいした量ではないし一時間もあればできるだろうと判断し、仲直り代わりに引き受けた。というか、あの流れで断ってしまうと、せっかく時野さんが渡そうとしたバトンを無下にするようなものだから。

『ふたりはお似合いだから、もしかして』

 時野さんには厳しいのに私には甘いと見えるのだろうし、そう思われるのも仕方ないような気もする。

 私の耳には入らないけれど、もしかしたら噂になっているのかな。

 疾風さんは交際を公表しようと言うけれど、それを止めているのは私だ。女性たちの憧れ竜神さんの恋人として衆目に晒されるなんて想像するだけで憂鬱だ。

 どう考えても不釣り合いだもの。私たち。



 自分の席に戻り、座る前にちらりと彼を見る。

 惚れ惚れするくらい素敵で凛々しい横顔の彼。竜神さん、あなたは目立ち過ぎるんですよ。隠密が目立ってどうするんですか、もう。

 密かに溜め息をついてパソコンに向かった。

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