子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
『それね、私の勘違いだったの。人目につかないようにシュレッターにかけておいてくれるかしら。あぁデータも忘れずに消してね』

 昨日、渡しに行く途中時野さんに廊下で会って、そう言われたために廃棄してしまった資料だ。

 まさか、そんなはず……。

「時野さんに確認してきます」



 秘書課は騒然としていた。
 みんなで資料を探している。

「あの、時野さん」

「ああ円花ちゃん。藤原専務の資料なんだけど。一時間後の会議で使うのよ」

「もしかして、冷凍食品に関する統計の資料ですか?」

「そうよ、それそれ。ああ、よかった。あなたが持ってたのね」

 え? でもあれは……。

「サーバーにあったはずのデータまで消されてるの。驚いちゃって」

「いえ、あの資料は時野さんが破棄するように、って」

 彼女が表情を一転させる。

「冗談言わないで、専務の資料の処分をあなたに頼む理由がないでしょ?」

 わけがわからない。一瞬自分がどうかしてしまったのかと混乱した。

「で、でも昨日……」

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