子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 電話口でいくつか会話を交わし、受話器を私に差し出した彼は、頼もしい微笑みを浮かべる。

「ファイル名を教えて欲しいそうですよ」

「はい」

 システムエンジニアの話によれば、昨日作って昨日消していたなら、やはりアウトだったそうだ。私が念のため優先して作成しておいたおかげで、バックアップデータとしてが残っていた。

「資料は何部?」
「十五部です」

「じゃあ問題なく間に合うな」

「どれ? 私が印刷するわ」と水咲先輩が身を乗り出した。
「これです」
「わかった。円花ちゃんは、専務に連絡して」

「は、はい」

 直接専務に内線を入れ、至急届けると連絡した。
 私が謝ると、藤原専務は『総務の仕事じゃないのに、かえって申し訳なかったね』と言ってくれた。

「円花ちゃん、資料綴じたわよ」
「ありがとうございます先輩」

 資料を持って立ち上がると、疾風さんが資料に手をかけた。

「俺が持っていきます」

「大丈夫です。私の責任ですから最後までやります。ありがとうございます」

 それでも彼は心配そうにしていたが、私はひとりで行った。

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