子作り婚の行方。～年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋～
　会議が始まるまであと十分。会議室にはすでに藤原専務がいて、時野さんが傍に立っていた。

「お待たせしました。すみません」

「ああ桃井さん、ありがとう。すまなかったね総務を巻き込んでしまって」

「こちらこそすみません」

　ちらりと時野さんを見ると、彼女はにっこりと微笑んで頭を下げる。

「桃井さん、お騒がせしてすみませんでした」

「いえ……」

　いったいどんな気持ちで、嫌な顔もせず私に謝るのか。
　彼女の気持ちは私にはまったく想像できない。

　

　ハァ。とりあえずよかった。

　さすがにもう魔女にしか見えない時野さんの微笑みを思い出すと気が重いけれど、気にしないようにしよう。

　大きく息を吐いて総務課の扉を開ける。

「あ、円花ちゃん、どうだった？」

　待ち構えたように、水咲先輩が身を乗り出した。

「お陰様で間に合いました」

　疾風さんはにっこりと微笑んで、よかったなというふうにうなずく。

　彼がいなかったら、バックアップを思い出せずいた。

　どこまでも頼もしい人だ。
　疾風さん、ありがとう。


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