子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
「まあまあ、いいから。とにかく、彼女は円花ちゃんに仕事を振って実力を見極めたのね。実際に仕事ができるから、今のうちに潰そうと思ったのよ」

 ――潰されるのか、私。

 ズンと気持ちが沈む。

 時野さんは大口の取引先の令嬢だ。おまけに社内で一番の美人との誉れ高い秘書課のエースである。

 嫌われたらお終いではないか。

「私、秘書課になんて行きたくないです」

「大丈夫よ。課長には私から報告しておく。とにかく今後は時野さんに近寄らないようにね。なにかあったらその都度私に言うのよ?」

「ありがとうございます先輩」



 疾風さんとは家に帰ってから話をした。

「今日はありがとう」

「別になにも?」
 彼は私の両頬を包み込んでチュッとキスをする。

「私……」
 そのまま私を抱きしめた彼は、背中をポンポンと撫でた。

「いいんだ。でも、これからは気をつけるんだぞ?」

「うん」

 彼の背中に手を回して耳を彼の胸もとにあて、すりすりと頬ずりをした。

 疾風さんの温もりに包まれていると、安心してくる。

 大好きよ。疾風さん。



「おお、ご馳走だな」

「無事に解決したお祝い」

 今日は、ハウスキーパーさんの作り置きは使わなかった。
 ホワイトソースのロールキャベツに魚貝たっぶりのブイヤベース。手間をかけて作ったのだ。
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