子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 痺れるような快楽が湧き起こる片隅で、時野さんの言葉が脳裏をよぎる。

『最近随分と竜神さんと仲がいいみたいだけど? 釣り合っていないわよ。見ていて痛々しいし、恥ずかしい』

 彼女は悪魔で嘘つきだとしても、私と疾風さんが釣り合わないのは本当だ。

 彼は自分の家族の話はしない。ここには家族の写真もないし。

 ねぇ、疾風さん。あなたはどこの誰なの?

 結婚を承諾すれば教えてくれるの?

 私はあなたが好き。
 でも、未来が見えない……。



***




 その後は時野さんの嫌がらせもなく、穏やかな日々が続いた。

 気づけば疾風さんと一緒に暮らし始めて三週間が経っている。

 寄れば触れば疾風さんとイチャイチャしているような日々は楽しいけれど、こんな調子ではいつ子どもができてもおかしくない。

 彼の妻になる自信はまだないけれど、いつまでも現実を見ないふりはできないから、先週覚悟を決めてアパートの管理会社に連絡をいれた。

 これで来月末には私の帰る家はなくなる。

 退路を絶って心を決めた。

 見えない未来でも、手探りで前に進みたいと思う。

 疾風さんがどこぞの御曹司でも、私は彼のそばにいたいから。
 妻となっていつまでも。

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