子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 そういえば……。

 夕食のカレーをかき混ぜる手が止まった。

 くるはずの生理が遅れている。まだ二日遅れているだけだからなんともいえないけれど、もしかしたら妊娠?

「ただいま。カレーのいい匂いがする」

 驚いて振り向くと、疾風さんが扉を開けて顔を出していた。

 玄関の音に全然気づかなかった。レンジフードの音のせいもあるけれど、考え事をしていたせいだ。

「お帰りなさい。今日はねキーマカレーにしたの」

 

 疾風さんがシャワーを浴びている間に食事をテーブルに並べる。

 その間に思い切って今夜こそ言ってみようと心に決めた。

 妊娠がはっきりする前にちゃんとしないとね。

 話は食後にするとして、なにも考えず他愛もない会話を楽しんだ。

「ロビーの装花、すごくよくなったって評判だね。お客さまにも褒められるって、受付の女性も喜んでた」

「だろ?」

 疾風さんはしたり顔だ。

 あの派手な装花の花屋を決めていたのは秘書課だったらしい。

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