子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 席を立った彼の背中を見つめながら、大きく息を吸う。

 結婚は、するかしないか。ここにグレーゾーンはない。

 がんばらなきゃ。

 疾風さんと一緒にいるために。まだ見ぬ子どものためにも。

 竜神家の訪問は二日後、日曜日に決まった。

 そんな急にと焦ったけれど、決意が揺るがないうちがいい。

 あれから二日経っても、相変わらず生理は遅れているので急ぐ必要もある。妊娠していたらもう引き返せないのだから。

「それで疾風さん、どういうご家族なの?」

 疾風さんはにっこりとした笑顔で「教えるが日曜はキャンセルなしだぞ」と言う。

「うん。行くよ。決めたんだもの」

「父は辰上丈一郎。TATUの社長だ」

 えっ――。嘘でしょ?

「またまたー、冗談きついなぁ。字が違うじゃないの」

「父の指示で偽名を使ってる。音が同じなら問題ないってね」

 本当なの?
「じゃあ、藤原専務とうちの課長は竜神さんが本当は辰上だって知っているの?」

「ああ。知ってる」

 信じられない。


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