子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
疾風さんが辰上社長の息子だったという衝撃の事実を受け止められないまま。
迎えた疾風さんの実家訪問。
疾風さんの運転する車は松濤の高級住宅地に入っていく。
それにしても、参った……。
『疾風さん、わざと黙っていたでしょ。社長がお父さまだなんて反則ですよ』
『人聞きが悪いな。円花があまり驚かないで済むように時期を待っただけ』
いつだろうと十分驚きますよ。
社長の指示とは言うが、まさか偽名まで使っているだなんて。
とはいえ今更逃げるわけにもいかないしいかず、こうして向かっているけれど。
「ふぅ」
呼吸がついつい大きくなる。
「緊張しちゃうか? 大丈夫、軽く挨拶をするだけって言ってあるから。お茶飲んですぐ帰ってこよう」
いっそ挨拶もなしで帰りたいです。
まったくもう。
「今日は皆さんご在宅なの?」
「父はいる。義母はいると思うが妹たちは習い事でいない」
「そっか、ふたりともまた中学生なのよね?」
「ああ、そうだよ」
妹さんは一年生と二年生。どちらも女の子だと聞いている。
彼女たちの実のおかあさまは現在の奥様だそうだ。
疾風さんのお母様が病気で亡くなり、その後お父さまが再婚した前の奥様たちとは一年と持たなかったらしいが、今の奥様とは結婚して十五年。離婚する様子もなく続いているそうだ。