泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
杏介は交換するタオルやパジャマ一式を紗良から受け取ると、「じゃあ」と言って踵を返す。

「あっ、杏介さん」

「うん?」

「あ、えと、おやすみなさい」

杏介は紗良の髪をひと撫でする。
サラサラの髪の毛はふわりとシャンプーが香り、杏介の胸をドキンと揺らして引き留めようとした。
最近では以前にも増して頻繁に会っているというのに、どういうわけか胸の高まりは押さえられそうにない。

おもむろに肩を引き寄せればポスンと杏介の腕の中におさまる紗良。

「おやすみ、紗良」

そっと耳元で囁いてから頬にキスを落とす。
お互い名残惜しさを感じつつも笑顔で別れた。

部屋に戻れば海斗がまだ真っ赤な顔をしつつも元気そうに寄ってくる。

「だれかきてたー?」

「うん、先生からお見舞いもらったよ。何か食べる?」

「ヨーグルトたべる。かいともせんせーにあいたかった」

「先生も会いたがってたよ。でも風邪うつったら困るでしょ」

「はやくほいくえんいきたい」

「熱が下がったらね。ヨーグルト食べたら頑張って寝よっか」

ずっしりと重たい袋から海斗の好きなアロエヨーグルトを取り出す。
奥の方には紗良の好きなとろけるプリンが入っていた。

「私も食べようかな……」

紗良は海斗と並んでとろけるプリンをいただく。
甘くてなめらかで口の中でつるんと溶ける優しい味わいに胸がいっぱいになった。
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