泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

重い体を引きずりながら夕飯を作り、海斗とお風呂に入る。
自分もささっとシャワーだけ浴びて海斗を追うように浴室を出た。

体を拭きながらクラクラと目の前がまわり、次第に立っていられなくなる。
体に力が入らないのだ。
かろうじてパジャマには着替えることができたが、その場から動くことができなくなってしまった。

先に出てテレビを見ていた海斗が、紗良がなかなかリビングに来ないのでひょこっと様子を覗きに来る。

「さらねえちゃんー?」

そこには床に横たわった紗良が浅く息を吐いていた。

「どうしたの?だいじょーぶ?」

ただならぬ様子に海斗は紗良を覗き込む。

「……ごめん、海斗。お姉ちゃんの……スマホ取って」

朦朧とする意識の中、タップした名前は杏介。
何度目かのコールのあと、留守番電話に切り替わる。

「さらねえちゃん?」

杏介のシフトは把握していないけれど、留守番電話に切り替わるときはたいてい仕事中だ。

紗良は繋がらないスマホを放り出した。
体がだるくて起き上がる気力がない。
横で海斗がさらねえちゃんと呼ぶ声が聞こえているのに、それに返事をする元気さえない。

とにかくダルい。
きっとシャワーを浴びたことで体力を消耗してしまったのだろう。
思った以上に紗良は体調不良だったことに今さらながら気づくが、こうなってしまったからにはもう遅い。

もうこのまま目を閉じて意識を手放してしまいたいとさえ思った。
< 116 / 145 >

この作品をシェア

pagetop