泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
深夜に目を覚ました紗良はもぞもぞと起き上がった。
まだ熱っぽいものの、ぐっすりと眠ったためかずいぶんと体が楽になっている気がする。
隣では海斗が寝相悪く転がっており、やれやれと布団をかけてやった。

(杏介さん、いない……)

ぐるりと見渡すがそれらしき人影はない。
つらくてどうしようもなく、 海斗がいろいろと世話を焼いてくれていたのは記憶にある。
そのあとに杏介が来てくれ、その姿を見ただけでどれだけ救われたことだろうか。
安心して急に眠気に襲われ、すぐに寝てしまったのだけど。

一階へ下りればリビングから明かりが漏れていて、電気を消そうと紗良は顔を出す。
と 、ソファに杏介が横たわっていた。

「……杏介さん?」

「紗良、どうした?」

「えっと、お水飲みたくて……」

「ちょっと待ってて」

杏介は立ち上がると紗良をソファに座らせる。
キッチンから水を持ってくると、紗良にグラスを手渡した。

杏介は紗良の額や首もとに手を当て 「まだちょっと熱いな」 と体温を確認する。
気遣いが嬉しくて紗良は胸がぎゅっとなった。

「来てくれてありがとう」

「いや、すぐ気づいてやれなくてごめん」

「そんなことない。 杏介さんはいつも私のこと……気遣ってくれて、優しくて……」

言いながら胸が詰まる。
視界がぼやけてきてポロリと涙がこぼれた。
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