泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

「紗良?」

「……ずっといてくれたの?」

「そりゃ、二人を置いて帰るわけにはいかないだろ?」

柔らかく微笑む杏介は涙に暮れる紗良をぐっと引き寄せ自分の胸に押しつける。
紗良は杏介のシャツを握りコテンと身を預けた。

「……私、熱出して弱ってるのかな?」

「俺は紗良が弱ってるときに側にいることができてよかった。こうして涙も拭ってあげられるし、抱きしめることもできる」

杏介の手が紗良を優しく撫でる。
背中を撫でられるたび、頭を撫でられるたび、もっともっとしてほしいと体が欲する。

紗良はゆっくりと頭を上げるとまっすぐに杏介を見る。
その視線を、杏介は大切に受け止めた。

「わたし……本当は寂しいの。杏介さんがいないと、寂しくてたまらない。ずっと側にいたい」

「ずっと側にいるよ。海斗が俺を受け入れてくれるなら、結婚しよう。もし受け入れてくれなかったら、その時は恋人になろう」

「……いいの?」

紗良の頬をまた涙が伝った。
杏介は親指で涙をすくい上げる。

「何を今さら。俺はずっと紗良が好きなんだから。気持ちは変わらないよ」

「……うん」

「俺は紗良がいいんだよ」

「私も……杏介さんが好き」

自然と二人の距離が近くなる。
吐息が聞こえそうなほどに近づくのは、相手を自分のものにしたいから。

「……風邪、うつるよ」

「うん、そんなのどうでもいい」

ボソリと呟いた杏介が紗良の唇を塞ぐまでにそう時間はかからなかった。

ほんのり熱を帯びた唇は甘くて柔らかくて愛おしい。
ようやく気持ちが通い合えたことに胸がいっぱいになり、たまらなく幸せを感じた。
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