泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
いろいろと気になってしまい聞きたいことはたくさんある杏介だったが、いかんせん人様の家庭を詮索するのはよくない。それくらいは社会人としてわきまえているつもりだ。
けれど、紗良が海斗の母親だと判明したとき、杏介はなぜだかショックを受けた。
それはもう、ハンマーで殴られたかのような衝撃だった。
このラーメン店に通っていたのはただ味が好きなだけではない。
仕事終わりに紗良の笑顔を見るのが癒しだったから。
(だけどまさか人妻だったとは、な)
見た目だけで言えば紗良はまだ若そうに見える。
だが実際には四歳の子持ちだ。
(人は見かけによらないな)
杏介は一人ごちた。
だからといって相変わらず紗良が杏介の癒しであることは間違いない。
可愛いは正義とはよく言ったもので、彼女が独身であろうが既婚者であろうが、可愛いものは可愛い。
別に手を出す訳じゃあるまいし、何で癒されようが自由なはずだ。
お気に入りのラーメン店で働く可愛い店員さんと多少会話をしたって文句は言われないだろう。