泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

「わかりました。じゃあ隣のコンビニでどうですか?」

「はい、それで。ありがとうございます」

ほっとしたような、それでもまだ落ち着かないようなそんな表情を浮かべる紗良。

お願いとはなんだろうか。
海斗の水泳のことで何かあるのだろうか。

(もっと優しくしてくださいとか厳しくしてくださいとか?)

プール教室の先生をしているとそういう意見をもらうことも少なくない。
だからきっとプール教室の指導に関わることなのだろうと杏介は予想して、コンビニへ向かった。

ペットボトルのお茶を一本だけ買って、あとは駐車場に停めた車の中で紗良を待つ。

スマホのアプリゲームで時間を潰していると、ラーメン店の方からコンビニへ向かってくる人影が見えた。

こちらに近づくに連れシルエットがはっきりしてきて、それが紗良だとわかる。

制服から着替えた紗良は、ロングワンピースにレギンスといったラフな格好。
小さなショルダーバッグを斜めに掛けて、小走りで向かってくる。

私服の紗良はやはり若くて、とても母親には見えない。

(でも母なんだよなぁ……)

世の中の不思議に触れた気分になりながら、杏介は車から降り紗良にわかるよう小さく手を上げた。
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