泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
次の火曜日、ラーメン店の隣のコンビニで待ち合わせることになった。

紗良にとっては自宅の近くであり、保育園のお迎えに行ってから寄るのにちょうどいい。

杏介は自宅から離れているが、職場近くということもあり行きなれている場所だ。

車から降りた海斗はすぐに杏介を見つけ、満面の笑みで叫ぶ。

「たきもとせんせー!」

「おー、海斗!頑張って保育園行ってきたか?」

「いってきたー!」

水色のスモックに黄色い帽子をかぶった海斗は自分の背中に隠しきれていない画用紙を杏介に突き出す。

「はい、これ。せんせーにあげる。かいとがかいたんだよ」

「うわあ、すっごく嬉しい!ありがとう!」

得意気な海斗から受け取ると、画用紙の縁に『おとうさん、いつもありがとう』とサインペンでしっかりと書いてあった。
紗良が言っていたのはこのことかと、杏介は苦笑いをする。

けれどやはり、杏介に渡したいという海斗の気持ちが嬉しく感じる。

嬉しそうな海斗の顔を見て、紗良は心底ほっとしていた。
と同時に、やはりパパの存在が恋しいのだろうかとも思ったりする。
海斗には祖父は一人いるが、遠く離れていて会う機会もない。

紗良と紗良の母に育てられる海斗。
今はいいかもしれないけれど、将来的にどうだろう。

ふと、そんな考えになるときがある。

でもだからといって、どうすることもできないのが現状だ。
世の中には父親がいない子どもはたくさんいよう。
いても幸せだとは限らない。
人それぞれ、事情があるのだから。

海斗の身近で遊んでくれる大人の男性が杏介だけだから、それで懐いているのかもしれない。
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