泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

紗良のほっとしたような表情に、杏介はまた海斗のことでなにかあるのだろうかと思った。

先日もらった父の日の似顔絵はせっかくなので棚の上に飾ってある。
子供が自分のために一生懸命描いたのだろうと想像すると顔がほころび、子供を相手に仕事をすることが多い杏介にとってそれは活力源にもなる。

自分が必要とされているような、そんな気分になって明日も頑張ろうと思えるのだ。

ラーメンを食べ終えてコンビニへ行き、ブラックコーヒーを手に取る。

(石原さんは何が好みだろう?)

自然とそんなことを考えて、ハタと手が止まる。

(あ、いや、仕事終わりで疲れているだろうし、そういう意味だし……)

などとどうでもいい言い訳を考えながら、最近美味しいと話題の抹茶ラテが目に入った。

自分が買おうとしていたブラックコーヒーはやめて、抹茶ラテを二本購入する。

(……最近話題だからな)

と、これまた言い訳じみた考えを巡らせながら、紗良の仕事が終わるのを車の中で待った。

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