泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
「あの、 嬉しくて。海斗の母親だって認めてもらえたみたいで」
「認めるもなにも、海斗くんのお母さんじゃないですか」
「はい、先生にはちゃんとそう見えているんですよね?」
「……はい」
「ありがとうございます」
「い、いえ……」
どう受け答えしていいかわからず杏介は口ごもる。
紗良は目じりを拭い鼻をすすると、ニコリと笑顔を見せた。
「すみません。 お引き留めして」
「あ、いえいえ。ああ、そうだ。これ、飲んでください。今日もお仕事お疲れ様です」
「いいんですか?ありがとうございます」
先ほど買った抹茶ラテを渡すと、紗良はパッと花が咲くように微笑む。
その笑顔はやはり可愛くて癒しで、別れるのが名残惜しくなってしまうほど。
だが、杏介はぐっと感情を抑えて 「ではまたプールで」 とクールに対応する。
紗良はぺこりとお辞儀をして小さく手を振りながら、抹茶ラテを大事に抱えて杏介の元を去った。