泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
ウォーターパークへ出かけて以来、紗良と杏介はラーメン店以外でも時々連絡を取り合うようになった。

話題はたいてい海斗絡みのことなのだが、海斗がいてくれることで話が盛り上がることもあり海斗様々だ。

「最近はジンベエザメにはまってて、そんな動画ばかり見てるんです」

「あ、じゃあ今度水族館行きます?さすがにジンベエザメはいないけど……」

「いいですね、楽しそう。イルカとかペンギンも好きなんです」

「じゃあ決まりですね」

そんな感じで行き先が決まり、杏介の日曜休みに合わせて三人で出掛けることが増えていった。

「入場記念にどうぞー」

誘われるまま足を運べば、イルカのパネルと写真を撮れるコーナーがあり、海斗は意気揚々と駆けていく。

「さらねぇちゃん、しゃしんとってー」

「はいはい」

「紗良さんも一緒に撮りますよ」

「ありがとうございます。じゃあ順番に……」

「よろしければお撮りしますよー」

スタッフに声をかけられ、紗良と杏介は一瞬顔を見合わせるも、ぎこちなく海斗の横に並んだ。

「はーい、パパママもう少し寄ってください」

微妙な距離感をスタッフに指摘され、紗良はドキリと杏介を見る。
杏介は何でもないように紗良に近づきそっと耳打ちした。

「俺たち家族に見えるみたいですね」

その言葉はひときわ紗良の心臓をドキンとさせる。
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが入り乱れて胸が苦しくなり、何も答えることができなかった。
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