泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~

「さて海斗、Tシャツでも買いに行くか」

「びったんこだから?」

「そう、びったんこだから。そのままでいると風邪ひくぞ」

「かいと、イルカさんのふくがほしい」

「売ってるかなぁ?ほら、紗良さんも行こう」

「……」

ムスッと不満げな顔をする紗良。
杏介は苦笑いをしながら尋ねる。

「もしかして怒ってる?」

「……怒ってません」

「せんせー、さらねえちゃんおこってるからきをつけて」

「……たぶん海斗に怒ってると思うけどな?」

「ええーなんでぇー。せんせーがパンツっていうから」

「あっ、お前人のせいにしたな?こうしてやる」

「あひゃひゃひゃひゃ」

コチョコチョと脇を突かれて海斗は笑い転げる。

バカみたいにこそこそと男どうし話をする姿を見て、紗良はやれやれとため息をついた。

一人だったら確実に海斗に対して怒っていたし、イライラした気持ちがなかなか解消されずにいたはずだ。
けれど杏介という緩衝材のおかげで負の感情がサーっと波が引いていくように落ち着いていく。

(杏介さんがいてくれてよかった)

すっかり落ち着いた心は杏介への感謝の気持ちに変わっていた。
< 60 / 145 >

この作品をシェア

pagetop