泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
「さて海斗、Tシャツでも買いに行くか」
「びったんこだから?」
「そう、びったんこだから。そのままでいると風邪ひくぞ」
「かいと、イルカさんのふくがほしい」
「売ってるかなぁ?ほら、紗良さんも行こう」
「……」
ムスッと不満げな顔をする紗良。
杏介は苦笑いをしながら尋ねる。
「もしかして怒ってる?」
「……怒ってません」
「せんせー、さらねえちゃんおこってるからきをつけて」
「……たぶん海斗に怒ってると思うけどな?」
「ええーなんでぇー。せんせーがパンツっていうから」
「あっ、お前人のせいにしたな?こうしてやる」
「あひゃひゃひゃひゃ」
コチョコチョと脇を突かれて海斗は笑い転げる。
バカみたいにこそこそと男どうし話をする姿を見て、紗良はやれやれとため息をついた。
一人だったら確実に海斗に対して怒っていたし、イライラした気持ちがなかなか解消されずにいたはずだ。
けれど杏介という緩衝材のおかげで負の感情がサーっと波が引いていくように落ち着いていく。
(杏介さんがいてくれてよかった)
すっかり落ち着いた心は杏介への感謝の気持ちに変わっていた。