泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
映画の後は近くのレストランへ向かった。
紗良はメニュー表を凝視し、うむむと悩みこむ。
時折ハッとしたり、困ったような表情になったり、顔面が忙しい。
そんな紗良の姿に杏介はふっと笑みを漏らした。
「ん?何?」
「いや?紗良が百面相で面白いなって」
「はっ!私、そんな顔してた?」
「うん。でも、なんか嬉しそうだなーって」
「そうかな?やだ、恥ずかしい。……私、海斗を育てるって決めたときからずっと海斗が一番で、自分のことは後回しにしてきたから、今日こうして杏介さんとデートできるなんて夢みたいで。外食も自分の好きなもの食べていいんだと思ったらつい嬉しくなっちゃって」
「そっか」
「あ、別にいつも我慢してるとかいうわけじゃなくて。……なんか、私の人生にもそういう彩りがあったんだなって思ったら、つい。今日は付き合ってくれてありがとうございます」
「紗良が嬉しいなら俺も嬉しい。食べたいものは決まった?」
「これにする。担々麺!」
「じゃあ俺は――」
本当に夢のようだと思った。
海斗を引き取ると決意したあと、紗良の将来に『恋愛』や『結婚』はもうないのだろうと思っていた。
むしろあってはならないのだと自分に言い聞かせてきた。
子供を育てることはわからないことだらけ。
制約されることだらけ。
けれどそんな日々の中でも、今日こうして杏介と二人でデートができている。
たくさんの偶然が重なって出会えたことが奇跡に思えた。
紗良はメニュー表を凝視し、うむむと悩みこむ。
時折ハッとしたり、困ったような表情になったり、顔面が忙しい。
そんな紗良の姿に杏介はふっと笑みを漏らした。
「ん?何?」
「いや?紗良が百面相で面白いなって」
「はっ!私、そんな顔してた?」
「うん。でも、なんか嬉しそうだなーって」
「そうかな?やだ、恥ずかしい。……私、海斗を育てるって決めたときからずっと海斗が一番で、自分のことは後回しにしてきたから、今日こうして杏介さんとデートできるなんて夢みたいで。外食も自分の好きなもの食べていいんだと思ったらつい嬉しくなっちゃって」
「そっか」
「あ、別にいつも我慢してるとかいうわけじゃなくて。……なんか、私の人生にもそういう彩りがあったんだなって思ったら、つい。今日は付き合ってくれてありがとうございます」
「紗良が嬉しいなら俺も嬉しい。食べたいものは決まった?」
「これにする。担々麺!」
「じゃあ俺は――」
本当に夢のようだと思った。
海斗を引き取ると決意したあと、紗良の将来に『恋愛』や『結婚』はもうないのだろうと思っていた。
むしろあってはならないのだと自分に言い聞かせてきた。
子供を育てることはわからないことだらけ。
制約されることだらけ。
けれどそんな日々の中でも、今日こうして杏介と二人でデートができている。
たくさんの偶然が重なって出会えたことが奇跡に思えた。