泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
展望台を下りると、公園の脇に小さな売店があった。
飲み物やお菓子、空港に関連するグッズが控えめに並んでいる。

「海斗、飛行機好きかな?」

「乗り物は好きだから好きかも」

「じゃあこれ、お土産で買ってあげよう」

杏介は飛行機のデザインされたキッズ靴下を手に取る。
いつも海斗のことを気にかけてくれる杏介のことをありがたく思いながら、紗良もお土産を選ぶ。

「私は映画のチケットくれた同僚にお土産買おうかな」

「紗良ってしっかりしてるよね」

「そんなことないと思うけど、そう見えるならそれは海斗がいるから……なんだと思う」

「今度は海斗も一緒に来ようか?」

「うん、絶対喜ぶと思う。……でも、あの、……こんなこと言うのは矛盾してると思うんだけど……」

「うん?」

「また二人でデートして貰えますか?」

こんなの自分勝手だと思っている。
こんなに自分本意な考え方は迷惑極まりない。

そう思ったけれど言わずにはいられなかった。
今日で杏介との繋がりが消えてしまったら嫌だから。
「お付き合いはできない」と断ったけれど、杏介を「好き」な気持ちは本当なのだ。

杏介は一瞬驚いたような顔をしたものの、

「もちろん、喜んで」

と、くしゃっと笑った。
優しさに溢れたその笑顔は紗良の胸をぎゅうっと締めつけ、涙がこぼれそうになった。
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