泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
海斗と買物に出かけたある日、スーパーの一角にはすっかりとお正月商品はなくなり、代わりにカラフルで目を引くたくさんのチョコがズラリと並んでいた。
「そっか、もうそんな季節かぁ」
「さらねえちゃん、チョコほしーい」
海斗が目をキラキラさせながら商品棚に駆け寄る。
子ども向けのキャラクターが付いたチョコに釘付けだ。
「じゃあバレンタインだから一個買ってあげるね」
「ばえんたいんってなに?」
「好きな人とかいつもお世話になってる人に、ありがとうってチョコを渡す日だよ」
「かいともわたしたい!」
「誰に渡したいの?」
「さらねえちゃん!」
まっすぐな瞳で見つめられ、胸がきゅんとなる。
海斗の素直な気持ちが嬉しくて紗良は目頭が熱くなり、そっと海斗の頭を撫でる。
いつの間にこんな気の利いたことを言うようになったのだろうか。
「ありがとね、その気持ちで十分よ」
「えー。あげたいのにー。あ!あとせんせーにもあげたい」
「本当に海斗は滝本先生が好きよね」
「うん、だいすき。さらねえちゃんもせんせーのこと、すきでしょ?」
「え、う、うん」
別に深い意味はないのだというのに、そんなことを言われたら胸がざわっと揺れる。
いちいち動揺してしまうなんて、どうかしている。
紗良は思わず熱を帯びそうになった頬を慌てて両手で押さえた。
「じゃあ、さらねえちゃんもわたしたら?」
「そう……よね?」
紗良は商品をぐるりと見渡す。
杏介は甘いものが好きだったかどうだったか。
よくわからないけれど、とりあえず小さめのチョコを買っておくことにした。
(そう、これは海斗が杏介さんに渡したいって言ったから。 だから買ったのよ。 いつもありがとうございますって感謝の気持ちなんだから)
などと自分自身に言い訳をして。
杏介には「好き」だと伝えているのだから、別に堂々と渡せばいいだけのはずなのに、どうにも恥ずかしい気持ちが先行してしまい自分の気持ちがついて行かない。
(……バイトのとき、渡せたらいいな)
そんな淡い希望を抱いて、チョコをそっとカバンに忍ばせた。
「そっか、もうそんな季節かぁ」
「さらねえちゃん、チョコほしーい」
海斗が目をキラキラさせながら商品棚に駆け寄る。
子ども向けのキャラクターが付いたチョコに釘付けだ。
「じゃあバレンタインだから一個買ってあげるね」
「ばえんたいんってなに?」
「好きな人とかいつもお世話になってる人に、ありがとうってチョコを渡す日だよ」
「かいともわたしたい!」
「誰に渡したいの?」
「さらねえちゃん!」
まっすぐな瞳で見つめられ、胸がきゅんとなる。
海斗の素直な気持ちが嬉しくて紗良は目頭が熱くなり、そっと海斗の頭を撫でる。
いつの間にこんな気の利いたことを言うようになったのだろうか。
「ありがとね、その気持ちで十分よ」
「えー。あげたいのにー。あ!あとせんせーにもあげたい」
「本当に海斗は滝本先生が好きよね」
「うん、だいすき。さらねえちゃんもせんせーのこと、すきでしょ?」
「え、う、うん」
別に深い意味はないのだというのに、そんなことを言われたら胸がざわっと揺れる。
いちいち動揺してしまうなんて、どうかしている。
紗良は思わず熱を帯びそうになった頬を慌てて両手で押さえた。
「じゃあ、さらねえちゃんもわたしたら?」
「そう……よね?」
紗良は商品をぐるりと見渡す。
杏介は甘いものが好きだったかどうだったか。
よくわからないけれど、とりあえず小さめのチョコを買っておくことにした。
(そう、これは海斗が杏介さんに渡したいって言ったから。 だから買ったのよ。 いつもありがとうございますって感謝の気持ちなんだから)
などと自分自身に言い訳をして。
杏介には「好き」だと伝えているのだから、別に堂々と渡せばいいだけのはずなのに、どうにも恥ずかしい気持ちが先行してしまい自分の気持ちがついて行かない。
(……バイトのとき、渡せたらいいな)
そんな淡い希望を抱いて、チョコをそっとカバンに忍ばせた。