泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
土曜日のプール教室は他の曜日に比べて生徒数が多く、レッスン数も多い。
故に、杏介たちインストラクターはレッスン修了後の事務所にてそれぞれがだらりと休憩をしていた。
杏介がコーヒーを飲みながら物思いに耽っていると、同じくコーヒーを飲みながら航太がニヤニヤと隣に座る。
「杏介、今年も何個かもらったんだろ、チョコ」
その言葉に即座に反応したのはおしゃべり好きなリカだ。
「えっ。 もしかしてママたちからですか?」
「いや、子供から。 断りたいけど、子供から手渡しされるとさすがにもらうしかないんだよね」
「へぇ~、滝本先輩モテモテですね」
「どうせ子どもにかこつけてママたちからも何個か入ってるんだろ?」
「うわー、マジですか。さすがイケメンは違いますねー」
リカは大げさに驚きチラリと航太を見る。
「……リカちゃん、今俺のこと可哀そうな目で見ただろ」
「あ、バレました?小野先輩かわいそー。もらえないなんてー」
「そう思うなら俺にくれよぉ」
「私がですか? 嫌ですよ。滝本先輩にならあげてもいいけど」
「何だとっ! もう少し俺を労わってくれよ。杏介も何か言ってくれ」
「あー、うん、二人とも仲いいよね」
「「仲良くないっ!」」
杏介の嫌みのないツッコミに、航太とリカの叫びがハモる。
バツの悪くなった航太はコホンと咳払いをして話題を変えた。