泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
やってきた動物園はウサギの餌やり、モルモットの餌やり、鯉の餌やり、と様々な体験ができる施設だ。

餌を手にした海斗は目をキラキラさせて夢中になった。
小さな動物は口も小さくモシャモシャと食べる姿が可愛らしい。
海斗もモルモットを膝の上にのせてご機嫌だ。

「さらねえちゃん、うまがいるー!みてー!」

「わ、ほんとだ……きゃっ」

ブルルンと鳴いて今にも柵から飛び出してきそうな勢いの馬たち。
海斗は意気揚々とニンジンを手に持って餌やりする気満々だ。

海斗がそっと手を出すと、ぎょろりとした目をした馬が興奮気味に口を開ける。
ベロンとニンジンが持っていかれ、海斗はきょとんとした後なにが可笑しかったのか大笑いし始めた。

「あはは!おもしろーい!さらねえちゃんもやってみて!」

「いや、お姉ちゃんは無理だから」

「えーなんでー」

と海斗とやり取りをしている間に、右手にかかるあたたかい何か。
嫌な予感がしてギギギと首を捻ってみれば、至近距離に馬の顔があり今にも紗良の手を舐める勢いだ。

「ひっ、ひぃぃぃぃ――」

卒倒しそうになる紗良を杏介が慌てて受け止める。

「おっと!」

「さらねえちゃん、しなないでー!」

海斗が冗談なのか本気なのかよくわからない煽り方をして、理不尽にもあとでこっぴどく叱られたのだった。
< 90 / 145 >

この作品をシェア

pagetop