泡沫の恋は儚く揺れる~愛した君がすべてだから~
午後からは併設されているキッズ遊園地へも足を運んだ。

コーヒーカップでグルグル回ったり、メリーゴーランドに乗ってみたり、海斗でも乗れるキッズ用ジェットコースターが意外とスリルがあったりと、楽しくてあっという間に時間が過ぎていた。
観覧車に乗るころにはもう夕方だ。

今日ばかりは紗良もシフトを入れておらず、帰りの時間を気にせず目一杯遊んだ。
とはいうものの、やはり海斗の生活リズムを考慮して遅くなることは避けるのだが。

帰りの車では海斗はきちんと約束を守って後部座席へ座る。
紗良はドキドキしながら助手席へ乗り込んだ。
杏介の隣に座ることはいつでも嬉しい。

車が発進すると、早々に海斗は船をこぎ出す。
そんな様子をバックミラーごしに確認して、紗良と杏介は顔を見合わせて笑った。

「杏介さん、今日は連れてきてくれてありがとう。 貴重なお休みだったのに」

「 紗良、それはもう言いっこなしだ。俺は二人と過ごせてすごく楽しかった。いい休日になったよ」

「それならよかった」

「でもまさか紗良が動物嫌いだとは思わなかったな。それなのに動物園に行きたいだなんて、やっぱり海斗のため?」

「それもあるけど、そういうところで杏介さんとデートしてみたかったというか、杏介さんも一緒なら大丈夫なんじゃないかなって思ったから」

「で、どうだった?」

「すっごく楽しかった。馬以外は。あれはダメだよ。もう、目が怖くって」

「あはは。珍しい紗良が見れたのは貴重だったな」

卒倒しかけた紗良を受け止めたことを思い出して杏介はくっくと笑う。

「杏介さんこそ、タコさんウインナーにあんなに感動するなんて思わなかったよ」

対抗するように紗良も印象深い出来事を口にすると、杏介は「あー」と言いながら頬をかいた。
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